腎・泌尿器の疾患
「腎臓」は腰のあたりに位置する、豆の形をした臓器です。主に血液をろ過し、老廃物を尿として体外に排泄する働きを担う泌尿器系の臓器の一つです。このほか、血圧や体液(水分やミネラル)のバランス調整、赤血球の生成促進、ビタミンDの活性化を通じた骨の健康維持など、さまざまな役割を果たしています。
腎臓は、肝臓や膵臓と同様に「沈黙の臓器」と呼ばれ、腎臓自体に問題が生じても自覚症状が現れにくい臓器です。そのため、血液検査などで異常が発見されることが多いです。漢方相談でも、尿や血圧に関するお悩みの背景に腎臓のトラブルが関係しているケースが多く見られます。
「膀胱」は下腹部に位置する梨の形をした臓器で、腎臓から送られた尿を一時的に貯蔵し、排尿を調整する役割を担っています。
また、膀胱は自律神経と深く関わっており、自律神経に関する悩みを持つ方の中には、膀胱の不調を訴えるケースも多いです。膀胱に関する漢方相談は、年齢・性別・季節を問わず、非常に多く寄せられています。
「前立腺」は膀胱のすぐ下、尿道を囲むように位置する胡桃大の臓器です。生殖器系の一つで、精液の生成や男性ホルモンの分泌に関わり、男性の生殖機能において重要な役割を果たします。
漢方薬は女性の生理痛や更年期障害などで知られることが多いため、漢方が女性向けという印象を持たれることが少なくありません。しかし、近年では「男性更年期(LOH症候群)」や「男性不妊」などが前立腺などの生殖器系のトラブルに関係していることが明らかになり、男性のお客様も増えています。特に、男性が不妊治療に積極的に参加する姿勢には目を見張るものがあります。
漢方医学において「腎」(腎臓・泌尿器系)は生命エネルギーの根幹とも言われ、全身の気・血・水の流れを調整する臓器として重要視されています。
その機能失調は全身にまで影響するため、悪化する前に病の早期発見・早期治療が非常に重要になります。
腎系の病証として最も代表的なものが「腎虚(じんきょ)」です。
腎虚は腎(泌尿器系、生殖器系、ホルモン代謝系など、広範な機能を含む重要な概念)の機能が低下し、循環機能や精力気力が不足する状態で、老化とも関連します。
漢方医学では「腎」系疾患を示唆する状態の一つ「少腹不仁(しょうふくふじん)」という腹候が有名です。
少腹不仁とは、下腹部が軟弱無力で、圧迫すると腹壁が容易に陥没し、指が腹壁に入るような状態を指します。
この腹候は「腎虚」つまり泌尿器・生殖器系の問題を示唆します。