胃・腸・肝・胆・膵の疾患
胃や腸は食物を受け入れて消化し、栄養の吸収にも関わる重要な器官であり、全身の健康に大きな影響を与えると考えられています。
腸は小腸と大腸に分けられ、小腸は食物の消化と栄養の吸収、大腸は老廃物の排出と水分の吸収を主な役割としています。
胃腸は自律神経と深い関わりがあり、自律神経の不調を抱える方の中には胃腸の不調を訴える方が多くいます。また、胃と腸は連続した管状の構造をしているため同時に不調になることが多く、消化器系の漢方相談において胃腸に関するお悩みは、年齢・性別・季節を問わず最も多い相談の一つです。
<肝・胆・膵>
肝臓は小腸から受け取った栄養素を代謝したり、有害物質を解毒したり、栄養分の貯蔵や胆汁生成による脂肪の消化を行うなど、生命活動の中心的な役割を担う重要な臓器です。
胆のうは、肝臓の下に位置する小さな袋状の臓器で、肝臓で作られた胆汁を貯蔵・濃縮し、分泌することで脂肪の消化を助けます。
膵臓は、食物の消化や血糖値の調節において非常に重要な役割を果たします。また、胃から送られてくる酸性の消化物を中和し、十二指腸での消化を円滑に進める役割も担っています。
胃や腸とは異なり、肝臓・胆のう・膵臓は異常があっても自覚症状が現れにくく、血液検査で初めて異常に気づくことが多いです。そのため、これらの臓器は「沈黙の臓器」とも呼ばれます。最近では、血液検査で異常が発覚し、漢方での治療を求めて来店されるお客様が増えています。
◆漢方で捉える「胃・腸」
漢方医学では、胃と腸は飲食物の消化・吸収、老廃物の排泄など、主に飲食物から得られる栄養素を取り入れる初期の段階で重要な役割を果たす臓腑として重視されています。そのため、胃や腸の不調は全身の健康に影響を与えると言われています。
◆漢方で捉える「肝・胆・膵」
漢方医学では、肝臓・胆のう・膵臓は体内の気(エネルギー)や血液の流れを調整する重要な臓器とされています。これらの臓器は全身の健康に深く関わっているため、早期に対処することが望ましいですが、血液検査を受けなければ問題があるかどうかを客観的に判断できず、治療が遅れることが西洋医学の課題とされています。
漢方医学では、これらの臓器に問題がある可能性を示す「胸脇苦満(きょうきょうくまん)」「心下痞(しんかひ)」等と呼ばれる症候が知られています。これらは胸部や脇腹、みぞおち付近の膨満感や圧迫感を指し、この症状は消化器系全般に問題が関与している場合が多いと言われています。特に右上腹部の肋骨周辺を押した際に痛みや詰まり感がある場合は、肝臓・胆のう・膵臓に問題が隠れている可能性があるため、セルフチェックを行い、疑わしい反応があれば早めにご相談ください。
消化器系の不調の原因として、気滞(きたい)や湿熱(しつねつ)が多く見られます。気滞はストレスや精神的な緊張によって胃や腸の気の流れが滞る状態であり、湿熱は体内に湿気と熱がこもり、各臓器の機能が低下する状態を指します。これらの原因は単独で現れる場合もあれば、複合して現れることもあります。したがって、同じ症状でもお客様の生活背景や発症の経緯、自覚症状の強さなどは異なることが多いです。